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リゾート部門

別荘を売る人との感慨深い思い出

30年以上も別荘売買の仕事に携わっていると、いろいろな感慨深いシーンに出会うことがあります。

十数年前、伊豆の熱海市郊外にある別荘を売りに出したいという所有者の方から電話がありました。

150坪の敷地に2階建の建物が付いた物件であり、売りたい希望価格も安かったので、早速見に行くことにしました。

物件は昭和40年代に開発・販売された大規模別荘地内に在りました。所有者宅に着くと、所有者は、別荘に現れる動物や昆虫など、隅から隅まで敷地の案内をしながら説明してくれました。私はその様子から、所有者の方の別荘への慈しみに似た気持ちを感じていました。

一通り説明を聞いて別荘に入り、お茶を出されると、持ち主の方はおもむろに手放す理由を話されました。「もう歳でここに来るのが大変になってしまった。息子たちに譲ろうかと思ったが、興味がないようだ。長年訪れていたが、そろそろ売却する時期ではないかと思う」とその70才位の持ち主は、ポツリポツリと話されました。誰も利用しなくなった上に、自分の体も少しづつ自由が利かなくなってきたので別荘にももう度々訪れることが出来なくなってきたと静かに話されているのを聞いていると、なにか哀愁に近いような、感慨深いものを感じてしまいました。お昼前に到着したのですが、気がつくと外は夕陽が沈み始め、薄暗くなっていました。

子供の成長と自身の高齢化で、思い出の別荘を静かに手放していく現実、それを一人で決めていかなければならない寂しさが別荘との離別なのだと、この初老の紳士から深く感じました。

リゾート評論家

森川正夫のリゾート通信